経営コラム

中小食品製造業及び飲食店の衛生管理のポイント

1.衛生管理の段階的導入のすすめ

最近、食品関連のニュースは1つが落ち着いたと思ったら、また新しいニュースが出てきます。そういうニュースを見て、自社の衛生管理を向上させたいと思っていても、お金や人材の問題などで対応が進んでいない場合もあるのではないでしょうか。

実際に、国の資料(※1)によると、HACCP導入済みの企業は、売上高100億円以上では約8割ですが、売上高が1億円以上50億円未満の企業では24.8%にとどまっています。中小企業の食品衛生への取り組みは難しい状況と推測されます。

※1 農林水産省 平成25年度食品製造業におけるHACCP手法の導入状況実態調査

では実際に、中小企業がどのように食品衛生を向上させていけばいいのでしょうか?

お薦めするのは、段階的なステップアップです。ステップは次の通りです。

(1) 食品衛生の7S活動
(2) 自治体の認証制度
(3) HACCP
(4) ISO22000
(5) FSSC22000
世の中ではHACCPやISO22000なども普及してきましたが、基礎ができていないと導入が難しく、途中で挫折するかもしれません。そのため、会社の状況に合わせた段階的な取り組みが大切となります。

ここでは、特に大切な(1)から(3)について概略を説明します。

(1) 食品衛生の7S活動

7Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「洗浄」「殺菌」「清潔」「しつけ」の7つの頭文字をとったものです。一般に言う一般衛生管理事項にあたります。7Sに沿って仕事を見直すだけでも、お金を掛けずに改善が見込める場合が多くあります。

(2) 自治体の認証制度

自治体の認証制度は、取得マークの表示ができたり、場合によっては有利な融資制度あったりと、メリットがあります。なにより、中小企業に適した内容の場合が多く、費用もそれほどかからず取得できます。

(3) HACCP

HACCPはHazard Analysis Critical Control Pointの略です。日本語では危害分析重要管理点となります。事前に危ない箇所(工程)を調査し、そこを重点的に管理するという手法です。世界的に普及しており、海外輸出を考えているのであれば、ほぼ避けて通ることはできないでしょう。

HACCPは、今は義務ではありませんが、将来はどうなるか分かりません。また、今から導入を考える企業にはHACCP支援法が活用できます。法律上の認定を受ければ長期の低利融資が受けられます。2014年からHACCP導入前の取り組みも対象となり、利用しやすくなりました。

HACCP導入は少し先という企業では、まずは(3)HACCP導入までを目標として、(1)の7S活動から順に取り組むことが最適です。

今回示した手法や制度も大切ですが、経営者による取り組みの決意を示すことが成功のポイントとなります。法律で示された基準だけでは食中毒を防ぐことは難しいと言わざるを得ません。保健所も法律を超えては強制できません。最終的にどこまで対応するかは、会社が、すなわち経営者が最終判断を下さなければなりません。

2.食品衛生の段階的な導入の具体的なステップ

食品衛生の段階的な導入の具体的なステップについてもう少し詳しくみていきたいと思います。

まずは7Sです。

製造業では一般的に5Sというのはご存知の方も多いでしょう。食品の場合も5Sでもよいのですが、衛生という観点から更に洗浄と殺菌を加えて7Sとなっています。見た目のきれいさだけでなく、清潔、洗浄、殺菌などで微生物の管理も考える点が、一般的な製造業の5Sと異なります。

7つのSは下記の通りです。

(1)整理
(2)整頓
(3)清掃
(4)清潔
(5)洗浄
(6)殺菌
(7)しつけ

なぜ7Sが必要なのでしょうか?それは製造や食品の取扱いの基本となるからです。

これは食品関連企業が衛生的な状態を維持するための一般的衛生管理事項と共通するところがあります。そのため、7Sを確実に行えば、食品衛生について一定のレベルを維持することができます。

ですが、実際に7Sを確実に行うことは簡単ではありません。確実に行うためにはきちんとしたルール作りと、そのルールを守る風土が必要となってきます。

例えば、廃棄すべきダンボール箱が放置されているのは、そもそも片づけるための整理のルールが無いことが考えられます。

上記の(1)から(7)について社内ルールがあるでしょうか?ない、または不十分な場合は、ルール作成を業務の一つと位置づけ、ルールを作成する人と時間を確保するよう、経営者が配慮することが必要です。

次に風土ですが、まずは経営者が7Sに取り組む姿勢を見せることが重要です。従業員は経営者の態度を見ています。次に社内に浸透させるためには“繰り返し”が必要です。定期的に教育を行う、朝礼などで取り組みを発表するなどを継続的に行うことで、社内に浸透していきます。7Sのルールなどを見えるところに掲示しておくのも効果的です。すぐに効果が表れなくても、地道に活動を続けることが大切です。

次のステップとして、第三者認証があります。社外から認められることで、よりモチベーションが向上します。また、社外に食の安全安心を示すことができ、取引先の信頼を得ることにもなります。加えて、取得のためには今までの活動を見直すことになり、更に充実した内容になります。

認証制度はHACCPやISO22000などもありますが、会社によってはハードルが高いことも考えられます。地方自治体の認証制度は中小企業の取得を想定しているため、導入しやすくお薦めです。

この時に、認証取得ありきで進めるのではなく、あくまでも食品衛生維持の活動の結果として評価を受けるという姿勢で臨むことが重要です。また、取得時期の目標を定めて計画的に進めましょう。

3.HACCP導入のポイント

衛生管理は切れ目なく継続させることが必要です。それには社内の仕組み作りがポイントになります。社内の仕組み作りに最適な手法がHACCPです。食品工場のイメージが強いかもしれませんが、飲食店にも有効な手法です。

HACCPは、50年程前にアメリカのアポロ計画の一環として、宇宙食の安全性を確保するために開発され、今では世界中で使われている食品衛生の管理手法です。食品安全の認証制度の多くがHACCPを基本としています。

また、HACCPというのは下記の5つの単語の頭文字をとったものです。

HACCP:Hazard Analysis and Critical Control Points
Hazard Analysis(危害分析)、Critical Control Points(重要管理点)
の2つの言葉が組み合さっています。

では、HACCPとは具体的にどんなものなのでしょうか。

HACCPは衛生管理のツールです。

「7つの原則」と「12の手順」が示されています。注意しないといけないのは、HACCPは管理基準や施設基準といったものは定められていません。この「12の手順」に沿って、事業者自らが考えられる危険性を分析し、そこから具体的な基準を作っていくのです。

HACCPの12手順
(1)専門家チームを編成する
(2)製品の仕様、特性について記述する
(3)食べ方、使用法について確認する
(4)製造工程をフローダイヤグラムに書く
(5)製造工程を現場で確認する
(6)危害分析を行う【原則1】
(7)重要管理点を決定する【原則2】
(8)管理基準を設定する【原則3】
(9)モニタリング方法を設定する【原則4】
(10)改善措置の方法を設定する【原則5】
(11)検証方法を設定する【原則6】
(12)記録の維持管理方法を決める【原則7】

HACCPの考え方は、工程管理をすることで人体に危害を及ぼす食品をできる限り製造しないということです。食中毒などのリスクが低くなるのはもちろんのこと、不良品の発生が抑制されるため、食品の廃棄や回収も減らせるメリットもあります。また、間接的には会社の信頼性向上や、従業員の意識向上といったメリットもあります。

しかし、HACCPを導入したからといって必ず成果が表れるというものでもありません。では導入の成果を出すためには、どうしていけばいいのでしょうか。

第一に経営者の導入に対する理解が重要です。会社全体での取り組みが必要になってくるからです。

第二に、企業の実力に応じた導入をすることです。HACCPを導入するためには7Sなどの基本的な衛生管理ができていることが条件となります。この部分を飛び越えて導入しようとすると無理が生じることがあります。企業の状況に応じて段階的にレベルアップしていくことがポイントです。

第三に書類や工程を一から作成するのではなく、現在運用している中で足りない部分を補うという観点で進めます。HACCPありきでなく、衛生管理をうまく回していくにはどうするかという視点を忘れず、現状をより改善する考えで進めるとよいでしょう。この考えは投資を抑えることにもなります。

最後に、海外ではHACCP義務化の流れがあり、日本もいずれ義務化されることが大いに予想されます。今からできることを少しずつ積み重ね、環境変化に対応できる基盤作りをしていただければと思います。

担当メンバー名:岡崎永実子(中小企業診断士 / エタニティラボ代表)

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