経営コラム

地域資源を活用した新事業・新商品開発について

中小企業にとっての地域資源

◆地域資源とは?

まず初めに「地域資源」とは何を指しているのか、簡単に整理しておきます。
地域資源は大きく次の3つに分けられます。
(1) 地域の特産物(農林水産物、鉱工業品)およびその生産技術
(2) 地域の観光資源(文化財や自然風景、温泉など)
(3) 地域にまつわる事象(歴史上の出来事や地域出身の人物など)

実は「中小企業地域資源活用促進法(*1)」という法律があり、この法律で定義されている「地域産業資源」はもう少し限られた内容となっています。また、この法律に基づき、各都道府県において地域産業資源が指定され、公表されています(*2)。

ただし、本コラムにおいては、各都道府県で指定されたものに限らず、「地域資源」をもっと幅広くとらえ、地域に関連するあらゆる資源のことを指しているものとお考えください。

(*1) 中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律(平成19年)
(*2) 各都道府県の地域産業資源情報については、こちらをご参照ください。
http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/kousou/index.html

◆中小企業にとっての地域資源とは?

大企業と異なり、中小企業は“経営資源”を多く持っていません。経営資源とは、企業経営において必要となる資源のことであり、よく言われるように、「ヒト」「モノ」「カネ」といった有形資産や「情報」などの無形資産を含めた、あらゆる要素のことを指します。

中小企業は、経営を維持・拡大していくために、限られた経営資源を有効に活用して利益を生み出していくことが求められます。しかし、スケールメリットが得られる大企業と比べ、中小企業が利益を生み出していくことは非常に困難です。ましてや、大企業と同じ商品を扱っていたのでは価格競争面で不利となるのは明らかです。

したがって、中小企業は大企業と同じ土俵で戦ってはなりません。大企業が参入してこない土俵を見つけるか、なければ自らつくり、そこで最強の座に永く座り続けることを目指すべきです。つまり、中小企業の取るべき戦略は、大企業がスケールメリットを生かしづらい、ある特定のニーズ(需要)をもつ比較的規模の小さな市場を見いだし、その市場において確固たる地位を築いていくことと言えます。

これを実現するためには、他社にはない、独自の商品をつくる必要があります。さらに、競合他社の追随を許さないよう、「独自の強み」を活かした商品であることが求められます。

とはいえ、経営資源を多く持たない中小企業において、自社の「独自の強み」を明確に見いだせていることは少ないでしょう。それが分からないからこそ苦労しているのです。中小企業として今日まで存続してこられたからには、何らかの強みを有していることは間違いありません。しかし、それが「独自の」強みかどうかと問われれば、疑問符を付けざるを得ないというのが現実ではないでしょうか。

そこで注目していただきたいのが地域資源です。地域資源は、中小企業にこそ活用のしがいのある資源です。

大企業では、スケールメリットを得るために、画一したやり方を追求します。どこかで得たノウハウをマニュアル化して社内で展開することにより、社内全体で効率化を実現していきます。逆に、社内のどこかで独自の方法を取られると、管理が非常に煩雑になってしまいます。したがって、限られた地域にのみ存在する地域資源は、大企業にとっては活用しづらいものなのです。

中小企業ではそのようなことはありません。中小企業は地域に息づく小規模な存在であり、地域資源を活用した取り組みを会社全体で実施することができるため、効率化を実現することが可能です。

したがって、地域資源を活用した新事業や新商品開発は、中小企業だからこそ取り組む価値が高いと言えるのです。

地域資源はその地域に密着した地域独自の資源であり、地域資源を活用した商品などは、大企業の商品や他の地域の商品などにはない特長を打ち出すことができます。そして、地域資源は、直接自社で保有していなくても活用することが可能です。つまり、地域資源を活用すれば、「独自の強み」をつくり得るのです。経営資源の乏しい中小企業にとって、これほどありがたい存在はありません。

「地域資源を、自社の経営資源に取り入れる」

これが、中小企業にとっての生き残りの一手と言えます。

 

地域の特産物を活用した新事業・新商品開発

◆特産物の生産者が取り組む新事業・新商品開発

地域資源の代表格である、地域の特産物そのものをつくっている生産者は、どのような取り組みをしていけばよいのでしょうか。

特産物そのものの売り上げで十分な利益を得られていれば良いのですが、そのような生産者は今や少数派と言ってよいでしょう。また、うまくいっている時期があっても、それが長く続くとは限りません。特に農産物など、自然相手の一次産品は工業製品とは異なり、必要な時に必要な量だけつくる生産方式がとりづらく、売上収入も安定しません。

そこで、特産物そのものをただ売るのではなく、別の方法で利益を得ることを考えます。方向性としては次の2つがあります。

(1) 特産物に手を加え、新たな加工品をつくって販売する
(2) 特産物に関連したサービスを提供し、その対価を得る

なお、農林漁業者がこれらの取り組みを始めることを「6次産業化」といいます。

先に(2)について簡潔にポイントをまとめておきましょう。

サービスの具体例としては、観光農園、収穫や田植えなどの農作業体験、味噌作り体験、料理教室、魚のさばき方教室、加工場見学などです。モノではなく「体験」を売り物にするもので、近年、消費者ニーズが高まっています。モノにとらわれないため、工夫次第でいくらでもアレンジが可能です。いかに体験サービスの特色をアピールし、集客できるかがポイントとなります。

参加したお客様の満足度は比較的高く、生産者と生産物に対する愛着も高まるため、従来商品の売り上げにもつながります。参加者がFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で発信してくれれば、口コミによる知名度アップも期待できます。観光農園や収穫体験では、人手不足という問題を解決する手段としても有効です。

このように、ただサービスを提供するだけでなく、既存事業の課題解決手段として成立するよう、サービス内容や提供方法を工夫することがポイントです。新たなサービス提供事業単体として見るだけでなく、経営全体としての効果を追求していくことが重要です。

(1)の加工品については、さまざまなものが考えられます。農産物であれば加工食品を目指されるケースが多いですが、食品である必要は一切ありません。化粧品などをつくることもできれば、インテリア小物などの工芸品を作ったり、建築材料や工業素材として使ってもらうことも可能です。バイオマス資源としての道もあります。今まで販売してきた野菜や果実の部分だけでなく、廃棄してきた部分にも目を向けると可能性は大いに広がります。

他人が思い付かないようなものであるほど、独自性を構築しやすくなります。固定観念にとらわれない、柔軟な発想力が求められます。自社でできる範囲に思考を限定せず、他業界の人なども交えて自由な発想でアイデアを出し合いましょう。実現の道はいくらでもあるものです。

試作の段階で自社にノウハウがないと感じたら迷わず他の協力業者を探しましょう。素人がつくったものが簡単に売れるほど世の中は甘くありません。餅は餅屋に任せ、品質を高めることが重要です。また、協力業者に任せることは、応援してくれる仲間が増えることにもつながります。特に地域資源を題材とした商品であれば、地元で応援者を増やしておくことは、販売面のみならず、さまざまな状況において有利につながります。

試作で手応えをつかんでも性急に売り出そうとしてはなりません。販売に当たっては、お客様に商品をどう見せるかが重要です。商品の特長、お客様への訴求ポイントは何かを明確にし、それが伝わるパッケージデザインや商品パンフレットなどをつくりましょう。ここでも、プロのデザイナーに依頼するのを躊躇わないことです。

デザインに関してはもう一つ重要なポイントがあります。それは、次の商品展開を意識することです。地域資源を活用した商品といえども、単独では一商品にすぎません。複数の商品を展開し、地域資源としてのブランド化を図っていくことが重要です。商品を派生的に次々と生み出してシリーズ化し、消費者やお客様の業界内で十分に認知されるよう、仕向けていくのです。

このとき、商品間でデザインがバラバラになってしまってはブランドがうまく形成されません。デザイナーに依頼する時は、今後どのような商品展開をしていくかも伝えておくとよいでしょう。

 

生産者以外の事業者にとっての地域資源の活用方法

◆下請け製造業にとっての地域資源活用法

「地域資源を自社の経営資源に取り入れることが中小企業の生き残りの一手」と前述いたしましたが、これはもちろん、生産者に限ったことではありません。生産者以外の事業者にとっても、地域資源は活用しがいのある資源です。特に、下請け製造業者にとっては、下請けから脱却できる可能性を秘めた有効な経営資源となり得ます。単刀直入に言えば、地域資源を活用すれば自社製品を持つことも可能ということです。

例えば、地域資源をもつ事業者と接触し、コラボレーションの可能性を探ります。金属加工や木材加工などを手掛ける企業であれば、地域資源商品の容器などに自社技術が活用できないか、地域資源と自社技術を組み合わせた新しい商品がつくれないか、などを考えていきます。もちろん、どこにでもあるようなものの代替ではなく、自社技術の粋を集めたこだわり品や、斬新な組み合わせ・デザインによるまったく新しい商品であるなど、どこにもないものを目指すべきです。こんな形で売られていたら面白いだろうな、というアイデアを提案できれば、相手にも喜んでもらえます。

また、観光資源や地域にまつわる事象に関する土産工芸品などを強引につくってしまうという手法も有効です。自社技術を徹底的に活かし、他社では決してつくれないような高品質なものをつくり上げ、マスコミに取り上げてもらうといったことも可能です。

ちょっとした遊び心と共に、自社の技術力を最大限にアピールすることによって、次の仕事につながる可能性も高まります。

◆小売・サービス事業者にとっての地域資源活用法

小売・サービス事業者は、消費者の声や反応といった極めて貴重な情報を経営資源として持ちます。フランチャイズ等の契約による制約などがある場合もありますが、基本的には販売する商品やサービスを自由に選択することができ、自由にアピールすることができます。ただし、自由度が高い分、事業者間の競争は非常に激しく、店舗の特色を明確に打ち出していかなければ、お客様を確保し続けるのは困難です。

その店舗の特色を打ち出すに当たって、地域資源を有効に活用していくことが考えられます。地域資源に関連した商品をラインナップしたご当地コーナーを設けたり、あるいは地域資源にまつわるサービスを考案して提供したりすることで、地域に密着した店舗という特色を打ち出すことが可能です。

お客さまからの声を集めて地域資源の生産者にフィードバックし、それを活かした当店限定商品をつくってもらうことも可能です。

店舗にとってはストアコンセプトが極めて重要ですが、店舗の特長づけがいまひとつうまくいっていないという場合は、ストアコンセプトの見直しにより大変革を図ることも、選択肢の一つとして入れておきたいところです。

店舗を持たないサービス事業者や、その他の業種の事業者であっても、特に自社の特長づけに悩まされているような場合には、地域資源を一つの切り口として考えてみるとよいでしょう。自社商品に活かす道もあれば、取引先として絞り込んでいく道もあります。

以上、地域資源を活用して新事業や新商品開発に取り組むためのメリットや実施に当たってのポイントについて述べさせていただきました。文字数が限られるため、十分にお伝えできなかったこともありますが、新事業や新商品開発に取り組む際のヒントにしていただければ幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

担当メンバー名:東松 英司(中小企業診断士 / 産地経営サポート 代表)

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