経営コラム

大阪府工業協会×大阪中小企業診断士会 ものづくり企業の現状と未来への展望

このたび、大阪府工業協会様にインタビューを行い、同協会の活動内容や大阪の製造業の現状と未来、そして大阪中小企業診断士会との連携についてお話を伺いました(インタビュー取材日:2024/10/18)。


<参加者>
公益社団法人大阪府工業協会 大辻様、關様
聞き手:大阪中小企業診断士会 企画部 坂口・濱谷・宮本、連携支援部 柴田
記 録:大阪中小企業診断士会 企画部 濱谷・宮本

坂口:本日はお時間をいただきありがとうございます。大阪の製造業の現状と未来について、また、大阪中小企業診断士会へのご期待やご要望についてもお聞かせいただければと思います。 よろしくお願いいたします。
では始めに、70年以上の歴史を持つとのことですが、設立の背景や目的を教えていただけますか?

大辻:大阪府工業協会の設立は1949年、戦後の復興期に官民をあげて大阪府下の産業の振興と発展に寄与することを目的として発足しました。設立の背景には初代会長、松下幸之助氏の「大阪を工業で盛り上げていこう」という熱い想いが込められております。多くの方々からのご支援のお蔭で2024年の12月には、創立75周年を迎えることができました。

坂口:75年は本当に長いですね。支援を続けていらっしゃる中で、大阪を中心とした製造業はどのような変遷や進化を遂げてきたのでしょうか。

大辻:75年前とは産業構造が大きく変化しています、協会が設立された戦後復興期には、大阪では繊維産業が盛んで、製造、卸売双方において地域経済をけん引しました。その後の高度成長期には3種の神器、3C といった消費ブームの下で機械・電機製造業がけん引役となりました。しかし、それ以降は製造機能や本社機能の流出も進み2000年代半ば以降は縮小均衡の時代となっています。そのような時代の変遷に合わせて製造業の扱う製品も移り変わり、事業の多角化や異分野への参入、あるいは海外市場に進出する企業が増加するといった変化が見られます。

坂口:現在、1500社以上の会員企業がいらっしゃるとのことですが、会員企業の業種や規模にはどのような特徴がありますか?

大辻:会員の事業や規模はさまざまですが、業種としては製造業を中心に機械・金属・化学分野に関連する企業が多いですね。規模でいうと、8割強が従業員200名未満の中小企業の方々です。各企業とも、きらりと光る独自の技術や特色を発揮しながら、さらに磨きをかけ成長を続けている企業が多く、こういった企業が、まさに日本の製造業の底力なのだなと感じます。

宮本:セミナーや研修、マッチングイベントなど、多岐にわたる支援をされていますが、特に力を入れている分野は何でしょうか?

大辻:当協会は企業の経営力の向上を支援するため「学びの場」「交流の場」「情報収集の場」「連携の場」の4つの場を提供しています。どの分野も力を入れているのですが、中でも「学びの場」の、セミナーや研修会の中身ついては特にこだわっています。対象者は、現場の技術者から経営者まで幅広い層に対し、個々のニーズに対応した多くのメニューを展開しており、ものづくり製造現場に特化したテーマの研修なども提供しています。

關:研修は、オンラインを含めると年間800回以上開催していますね。

宮本:800回はすごいですね!どんどん増えてきているのでしょうか

大辻:はい、ここ数年で研修の数も大きく増えました。コロナ前は、協会の研修会場に通える方が対象でした。それが新型コロナの影響で、講師も受講生も来場する事ができなくなってしまいました。その前からオンラインでの研修は計画していたので、「ピンチはチャンス」と急遽、配信用のスタジオを自前で作りオンライン研修をスタートしました。開設当初はリアル研修の代替でしたが、今では、遠方でそれまで接点のなかった企業からも、お申し込みをいただけるようになりました。結果、教室を使ったリアル研修に加え、リモート配信によるオンライン研修の二本立てのメニューが実現し開催件数の拡大にも繋がりました。

宮本:研修プログラムは様々なレベル向けと伺っていますが、長く続いているものや、最近ニーズが上がってきたものなど、特徴のあるプログラムを教えてください。

大辻:ベテラン向けに個別のスキル強化を目的としたものから、毎年4月に実施する新入社員対象の研修まで、幅広いニーズに対応していますが、特徴的な講座としては「大阪府工業技術大学講座」があります。今年度に64期目を迎えている、1年間の研修プログラムです。ここでは実用的な機械工学を中心に、生産管理や制御技術、電気工学などの幅広く専門的な知識をしっかり学ぶことができます。

宮本:64年の歴史は長いですね。一年間通っていると、受講生同士が「一緒にがんばった仲間」になりますね。

大辻:大学講座を同期で卒業された方が、 十数年経った今でも交流が続いているという話もお聞きし、私たちも大変嬉しいですね。技術や知識を習得するだけではなく、 大切な仲間づくりの場としても、お役に立てているのが何よりです。その他にも、好評をいただいている「工場見学会」があります。ご存じの通り、工場の見学に関しては、大変セキュリティが厳しく簡単には許可を頂けません。そこで当協会が主催者となり見学先企業に対し安心を担保することで、一人でも多くの方に他社工場における創意工夫のアイディアを共有できるよう取り組んでいます。さらに「工場長大会」という、工場責任者に対象を絞った異業種交流プログラムも用意しています。

宮本:工場長の交流会ですか?なかなかそういうカテゴリーではできないですね。

大辻:まさに日本を代表する企業の製造・ものづくり現場の責任者を講演者としてお招きし、実際の現場での取り組みや、その苦労話、成功事例等ついて、自らの経験や体験を語っていただく場です。工場長、現場の責任者または、これからその責を担っていく方にとって、貴重な情報取集の場になればと企画しています。

宮本:やはり現場を知ることが、とても重要なんですね。

大辻:はい、私たちが提供しているプログラムは座学が中心ですが、その起点はすべて現場にある事が重要だと考えています、階層別研修や生産管理などの他の分野においても、現場で役立つ研修内容にこだわることで企業の経営力の向上に結び付くことを目指しています。

濱谷:研修やイベントに参加された企業様の成功事例や、経営にプラスの影響を与えたエピソード等があれば教えてください。

大辻:そうですね。当協会主催の「展示商談会」というプログラムがあります、これは多数対多数の企業マッチングを目的とした展示会とは異なります。それは、まず提案を受入れていただく企業を1社決め、その企業に対して提案したい出展企業を募集します。出展企業側のメリットは提案先の企業の事業や取扱い製品が明確で自社技術の提案ポイントを絞れることです。また提案を受入れる側の企業にとっては、事前に出展企業の技術や製品情報を確認でき、的を絞っての相談やヒアリングができる、また、自社敷地内で展示会を開催するので、多くの社員やパートナー企業が仕事の合間に気軽に見学できるなど、大変好評をいただいています。この展示商談会においては、展示会当日に見積り依頼から話が進み、その後ビジネスが成約したというお話も複数の企業から頂いています。このような展示会を通じて、あらたな技術交流が生まれWIN-WINの関係構築につながるのはとても有意義なことだと思います。

濱谷:長い間、製造業を支えてこられたご経験から、大阪府工業協会様から見た大阪の製造業の課題をどのようにお考えですか?

大辻:大阪に限らず日本の製造業を取り巻く環境は、世界的な産業構造の劇的な変化の影響により大きな転換期を迎え予測がしづらい時代になっています。各企業がこれまで積み上げてきた独自技術や特色を伸ばしつつ、個々の技術を掛け合わせことで、更に新たな価値が創出されていくはずです。特に大阪の製造業の皆様は、他にはない尖った技術を持っておられるので、企業同士の技術交流がさらなるイノベーションを生み出すのではと。

濱谷:大阪の製造業の特長や強みはどのように捉えていらっしゃいますか?

大辻:大阪人はコミュニケーションがとても上手ですよね。それは自分だけでなく相手のことを配慮する気持ちが強いからだと感じます。ビジネスにおいても経営者が自社だけでなく他の経営者と話し合い、社会全体にとって今、何をすべきかを考えて事業を進めているというのも強みだと感じます。

坂口:士会とは、研修講師の紹介等で連携させていただいていますが、どのような成果が得られていますか?

大辻:中小企業診断士としての専門性を発揮いただき多くの講座で講師をご担当いただいています。豊富な実践経験に基づき企業の経営課題に寄り添った講義内容は大変好評です。今後は講義のメニューを拡大すると共に、研修以外のプログラムでも是非お力添えをいただきたく思います。

濱谷:ありがとうございます。最後に、協会として掲げる今後の目標や使命についてお聞かせください。

大辻:私どもは、企業経営の根幹となる「人づくり」を軸として、ものづくり現場に密着したテーマの研修事業を重視しつつ、一方で時代の変化やDXといった技術革新の動きを捉え、新たな取り組みにチャレンジしてまいります。それにとどまらず、さまざまな事業活動を通じて厳しい競争に立ち向かう企業を支援し、個々の企業の競争力を高めることで、関西経済、ひいては日本経済のさらなる成長に貢献したいと思います。

坂口:私たち士会も、支援を通して大阪を盛り上げていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。本日は、インタビューありがとうございました。

公益社団法人 大阪府工業協会HP:https://www.opmia.or.jp/

CONTACT US お気軽にお問い合わせ・ご相談ください

お問い合わせに対してコンサルタントが
ヒアリングにうかがいます

Tel. 06-6809-5592

受付時間 平日 9:00〜17:00

CONTACT US

お問い合わせ

お気軽にお問い合わせ・ご相談ください

お問い合わせに対してコンサルタントがヒアリングに伺います

Tel. 06-6809-5592

受付時間 平日 9:00〜17:00

お問い合わせ

CONTACT