経営コラム

今日からできる「幸せになるためのメンタルの強化」

はじめに

パーソル研究所の調査によると、日本の就業者の幸福感は世界18か国中で最下位です。また、労働人口の7割以上が肉体的疲労を感じている、という調査結果もあります。最近よく報道される日本の生産性向上のためには、幸福感を上げたり、メンタルヘルスを向上することも必要ではないでしょうか。最近の様々な研究結果や筆者の実体験も基に、メンタルを強くするにはどうすれば良いか、メンタル強化が生産性向上にもつながること等をご紹介します。

日本人はみんな疲れている?

パーソル総合研究所の調査によると、日本は18カ国・地域中で最も低い結果でした。
また、日本リカバリー協会の調査によると、2020年の「疲れている人」及び「慢性的に疲れている人」は、2017年の調査開始から最も多い82.3%という結果になりました。2021年にはやや減少しましたが、コロナ禍の影響のためか疲労傾向は高止まりのようです。

はたらくWell-beingの国際比較

出所:パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査 はたらくWell-beingの国際比較」

日本の疲労状況

出所:一般社団法人日本リカバリー協会「日本の疲労状況」

私が講師を務めさせて頂いている中堅・中小企業の管理者の方々を対象とした「管理者基礎コース」でも、疲労感を口にする方が非常に多く見受けられます。日本人はみんな疲れているのでしょうか?疲れているということは、幸福感が高い状態とはいえず、メンタルヘルスも良い状態とは言えないように思います。

メンタルヘルスの定義

さて、メンタルヘルスという言葉ですが、実はWHO(世界保健機関)でしっかりと以下のように定義されています。
1)自らの能力を自覚していること
2)人生の通常のストレスに対処できること
3)生産的に働くことができること
4)地域社会に貢献できること

要するに、メンタルヘルス(心が健康な状態)とは、自分の状態を自分自身が「幸福だと感じている」ことであり、個人的・主観的な判断だということです。
ついでに言うと、幸福感(well-being)とは、well=良い、being=そこにある状態です。doing(何らかの行動ができる状態)でもhaving(何かを持っている状態)でもない、即ち、自分自身でいることに心地良いと感じている状態です。
他人と比べて、お金を持っているとか、出世しているとか、よく仕事ができるとか、ということでなく、飽くまでも自分は今の状態が良いと思っていることがメンタルヘルスなんです。これって、ある意味(自分だけの思いで良い)ではとても簡単で、ある意味(他人と比較しない)ではとても難しいかもしれませんね。筆者の経験的には、他人と比較する傾向が強い方ほど、メンタルヘルスが良好ではない気がします。

メンタルが強いとは?

では、メンタルが強いとはどういう状態でしょうか。これは、いわゆる「ポジティブ思考」を維持している状態と言われています。即ち、どんなにストレスを感じる状況でも、その状況を有利にとらえることで自らの行動を良くする思考ができている状態です。ここで重要なことは、良い行動(もしくはその結果)が必要であり、ポジティブ思考になることではない、ということです。
これは言い換えると、ストレスを感じた状態において、怒りや緊張などネガティブな感情を持つことそのものは悪くない、ということです。例えば、怒りは人類に備わった狩猟生活時代の闘争本能からくるもので、敵を威嚇する攻撃行動により大型の獲物を捕まえていたのです。要するに、怒りという感情を持つということは、いわば人間として必要な機能でもあります(怒りをどう表現するかは、また別の問題ですが)。

ネガティブな感情だからといって、それを隠し過ぎると逆に自分や周りの人にストレスを与えて、逆効果になることもある、と言われています。大切なことは、怒りという感情を隠すことではなく、怒りという感情にきちんと気付くことによって、それをコントロールできる自分の行動を選ぶことで、そのような行動がポジティブな行動であり、ポジティブ思考でもあります。
ポジティブ思考とは、ネガティブな感情を持たないこと、我慢すること、という勘違いが多い感覚を筆者は持っていますが、そうではありません。ただし、ネガティブな感情をもったにも関わらず、良い行動を取れた、と自分で感じたときには、「今日の自分は偉かった」と、自分で自分を褒めちぎることは、ポジティブ思考だと思います。
私事で恐縮ですが、筆者はテニス観戦がとても好きで、よくテレビで観戦します。テニスは時には5時間を超えることもある長時間の個人スポーツで、プレーヤー自身の感情処理の巧拙が如実に現れます。例えば、トッププレーヤーの一人であるジョコビッチは、試合中に、吠えたり、笑ったり、怒ったり、独りごとを言ったり、試合中の感情処理が非常に上手で、メンタルヘルスを高い状態に保ち、それが強さにつながっているなあ、といつも思います。

幸福感が高いと生産性は向上する

前述の通り、メンタルヘルスと幸福感はほぼ同じ状態だと思いますが、幸福学を提唱されている慶應義塾大学大学院教授の前野隆司氏によると、主観的幸福度が高い人は、創造性は3倍、生産性は31%、売上は37%高い傾向にあり、幸福度の高い人は、職場で良好な人間関係を構築し、転職率、離職率は低い、とのことです。

要するに、会社経営という観点では、幸福度が向上すると、生産性が向上し、売上や利益も向上する、ということです。働き方改革で時短の徹底ということも大切ですが、社員やチームメンバーを幸せにすることができれば、社員、経営者、取引先が三方良しになるということです。
社員の方や経営者の方の幸福度やメンタルヘルスを向上させることは、簡単なことではないかもしれません。しかし、個人が「自分自身でいることに心地良いと感じている」ことが、良好な人間関係につながり、会社や組織の生産性向上にもつながるのであれば、そういうことを意識することはとても重要ではないでしょうか。
メンタルヘルスを向上するためにどうすれば良いかは、人によって様々ですが、基本的な考え方は以下の通りだと思います。
・ネガティブな感情を持つことを悪いことと思わない、ネガティブな感情を我慢しない
・ただし、ネガティブな感情に気付いて、適切に対応し、良い行動を取る
(例えば、よく焦ってしまう人なら、「まずは落ち着く」と自分に言い聞かせる等)
・良い行動を取れたときは、自分で自分を褒める

まとめ

以上、日本人の7割近くが疲労感を感じており、幸福感とはほど遠い状況にあるが、社員や経営者の方の幸福感を高めると、会社の生産性は向上し、売上や利益も向上すること、幸福感を向上させるために心掛けるべきことをご説明いたしました。自分の考え方のクセを診断するためのストレステストもありますので、このコラムについて詳しい話にご興味のある方は、参考図書をご覧頂くか、筆者までご連絡頂ければ、と思います。

寄稿者:大川 剛義
中小企業診断士、経営革新等認定支援機関、AFP(ファイナンシャルプランナー)
MBA(経営学修士)

※参考図書:田中ウエルヴェ京 「心の整えかた」NHK出版
前野隆司「幸せな職場の経営学」小学館

CONTACT US お気軽にお問い合わせ・ご相談ください

お問い合わせに対してコンサルタントが
ヒアリングにうかがいます

Tel. 06-6809-5592

受付時間 平日 9:00〜17:00

CONTACT US

お問い合わせ

お気軽にお問い合わせ・ご相談ください

お問い合わせに対してコンサルタントがヒアリングに伺います

Tel. 06-6809-5592

受付時間 平日 9:00〜17:00

お問い合わせ

CONTACT