経営コラム

自分で考え行動できる整理手法・ビジョナリーオーガナイズ

はじめに

「なんだか、工場や事務所が乱雑だな」
そう思い、業務改善を実践しようとすると真っ先に出てくるのが5Sというフレームワークです。
5Sとは整理・整頓・清潔・清掃・躾の頭文字をとっており、これを実践することで、物を探す時間が削減できる上に、多重買いがなくなる、機械の故障を未然に防げる、安全性が高まるといった効果も期待できます。

 しかし、5Sを実践する従業員の方が継続できなければ、先述したメリットの効果も低減してしまいます。そのための躾ですが、人の行動を変化させるには90日継続しなければ習慣化しないと言われています。習慣化するためには、物理的な整理の継続以外に考え方や思考の整理も重要となります。
 本コラムでは、5Sへの取り掛かり・継続を目指すために、思考の整理をしてありたい姿を先に共有化する”ビジョナリーオーガナイズ”の手法についてお伝えします。
本コラムの要点は下記のとおりです。
1. 従来の整理整頓の手法とビジョナリーオーガナイズ
2. バックキャスト思考とは
3. ビジョナリーオーガナイズ(VO)の進め方
4. 整理だけで終わらない

従来の整理整頓の手法とビジョナリーオーガナイズ

従来の整理整頓の流れは、どこか改善したい場所があり、その場所に対して要る物、要らない物を分けて、要る物を使いやすいように配置して、現状解決のために整理整頓をすることです。目の前の課題が明確化している場合は解決方法として非常に効果が高くなります。
ところが、課題が明確化していない状態では、整理整頓をおこなっても効果が低く、ただ、「やっただけ」の結果しか生み出さないのも事実です。
課題がわからない状態で整理整頓の効果を高めるためにはどうすれば良いか? よくわからないけど、事務所や工場、机で作業がしにくい場合はどうしたら良いのか? その疑問に対して、「ビジョナリーオーガナイズ(VO)」と言う方法を提唱します。
ビジョナリーオーガナイズ(VO)はバックキャスト思考を応用したものです。
これにより、自分・従業員・同じ部署の仲間を巻き込んで整理整頓に取り組むことが可能です。また、やり方を覚えれば、どの場所(工場、事務所、家庭内ですら)でも応用することができるため、汎用性が高い方法です。

バックキャスト思考とは

過去の実績や現状や課題から未来を考えるのではなく、「ありたい姿/あるべき姿」を描いたうえで、そこから逆算して“いま何をすべきか”を考える思考法です。
反対の言葉でフォアキャスト思考というものがあります。
こちらは目の前の制約(問題)を取り除くことで問題を解決することです。
どちらが良い悪いというものではなく、解決策の選択肢の一つとして捉えると良いでしょう。

ビジョナリーオーガナイズ(VO)の進め方

STEP.0 初めに
 部署や場所のありたい姿を想像します。この際、一人よりも3人程度の小集団で始める方が良いです。多くても5人に留めておくとよいでしょう。
 理由は以下の3点です。
1. コミュニケーション速度を増加して調整時間を短縮する
2. 責任感の欠如を防止する
3. レジリエンス(回復力・柔軟性・適応力)を高くして、突破力を強くする
<1.コミュニケーション速度を増加して調整時間を短縮する>
VOはプロジェクトとして動くこととなるため、コミュニケーションの速度や正確性を高くして認識ずれを抑える必要があります。人数が多いと、ずれが発生する・日程調整が難しくなる、などの余計な時間がかかります。
<2.責任感の欠如を防止する>
人数が少ない方がプロジェクトに対して自分ごととして取り組むことになります。人数が多ければ多いほど、責任感の欠如が発生しますので、「誰かがやるだろう」という意識を省いてあげる必要があります。
<3.レジリエンスを高くして、突破力を強くする>
1人では困難な壁が立ちふさがったときに、くじけてしまうかもしれません。仲間がいれば、壁の乗り越え方や壊し方、迂回の仕方など様々なアイデアが出てきます。
 仲間を加える際には、考えに同調する人を仲間に加えるとスムーズです。影響力が小さい人をメンバーに加えても、ありたい姿が異なっている場合があります。自分の考えと近い人と共に進めていくのがありたい姿に早く近づきます。
ありたい姿の風景や音、匂い、感触、感情などリアルであればあるほど、整理整頓の具体的な対応策が創出されていきます。

STEP.1 ありたい姿のイメージ像を作る
「ありたい姿」という言葉は抽象的で、人によって異なるため、ありたい姿の統一をおこないます。例えば、1年後にある一部分の空間や場所において幸せと感じる状況をイメージしてください。
数か月だとプロジェクトによっては成果がでない場合があり、逆に、3年や5年だと期間が長すぎてメンバーの士気が下がってしまう恐れがあります。最悪、プロジェクト中止という話になりかねません。

STEP.2 現状の理解
1年後のありたい姿に対して、現状はどんな状況かを考えます。
「〇〇が出来ていない、〇〇だからダメ」という否定的な考えは良くありません。人は否定が続くと意欲がわきにくくなります。
そのため、「整理が出来ていない」ではなく、「机に不必要なものがある」。と言った様により具体的な事実を挙げていくと精神的にも楽になります。
 現状の理解をする際は4つの枠に絞って考えると現状理解の時間短縮や、課題が見つけやすくなるメリットがあります。
その4つの効果は以下の通りです。これらが満たされると、社会面においても良い効果が発揮されます。
1. 経済面
2. 時間面
3. 精神面
4. 安全面
ありたい姿に対して、経済面は現状どうか? 時間面はどうか? などを考えていきます。正解・不正解はなく、「A部署の残業が多い」や「現場事務所が落ち着かない」「消耗品費の出費を控えたい」などでOKです。なるべく多く書き出すことが望ましいです。
その後、同じ言葉や意味が似ている言葉を統合します。

STEP.3 課題の抽出
ありたい姿に近づくために、現状とのギャップを考え、解決していくべき事を挙げます。
 「残業を10時間減らす」「落ち着いた空間を作る」「多重購入をゼロにする」など、ありたい姿と現状をつなぐ課題を列挙します。
 「残業をゼロにする」などの、達成困難な課題が出た場合、すぐに否定するのではなく、「ゼロ時間は難しいが、何時間であれば削減できるだろう」「ゼロ時間を達成するにはどんなことが必要だろう?」という問いかけをして、理想と現実のすり合わせをします。
 実際に動くのは仲間(従業員)ですので、提案を頭から否定されると意欲がなくなります。
そうなると「ゼロ時間なんて無理とわかっている。理想を言えって言ったから、言ったんじゃないか」と思ってしまわれます。これでは、今後の提案も出しにくくなります。突飛な提案から未知のアイデアが出てくることもありますので、柔軟に対応します。

STEP.4 課題の対応策
ありたい姿と現状のギャップを見比べて、どの課題が解決すれば、ありたい姿に一番近づくかを決定します。
全ての課題を解決できればいいのですが、時間は有限です。効果が高い(かける時間・コストが小さい、課題の解決によるありたい姿への接近度が大きい)順に並べ替えます。
そして、優先順位が高い課題から解決するために、5SやECRSなどのフレームワークを使用します。
VOではその場所をどんな空間にしたいかを考えて、現状も把握してから、課題を達成するために手法(フレームワーク)を使用します。
これにより、メンバー全員が同じ目標に向かって考え方や思考の整理ができるため、フレームワークが同じでも、提案や意欲に違いがでてきます。

整理だけで終わらない

Organizeとは整理という意味と、組織という意味があります。
すなわち、VOは整理整頓だけにとどまりません。ビジョナリー思考がリーダーやメンバーに身につくため、組織活性化につながります。
整理整頓はやり方さえわかれば、新入社員でも小さなお子様でも実施することが可能です。メンバーでVOに取り組むことで、整理整頓のやり方を身に着けつつ、ありたい姿について考える機会、スモールゴールの達成感を味わうという成長に欠かせない流れを体験することができます。
これは成長循環モデルに通ずる考えでもあり、関係の質を高めて(ありたい姿を共有する・お互いに話し合う)、思考の質を高めること(どうすれば、ありたい姿。幸せになれるか考えあう)で、行動の質が高まります。(アイデアがたくさん出る。パフォーマンスが高まる)そして、結果の質が高まる(全員が納得した結果の創出、継続性のある整理)ことになります。

 是非ともVOを実践し、従業員の成長と業務改善を自走化できる企業づくりを推進してみてください。

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