経営コラム

あるべきM&Aとは・・・M&Aにおける全体最適を図るマストとは

はじめに

最近、テレビでも「M&A」のコマーシャルをよく目にする機会が増えました。中小企業のM&Aも右肩上がりで増加しており、件数は年間3〜4千件程度が実施されていると推計されています。「マイクロM&A」といわれる零細企業分も含めると、年間2万件と推定している記載もあります。

出典元:「中小企業の経営資源集約化に関する検討会取りまとめ」2021/4/28中小企業庁

しかしPMI(M&A後の統合プロセス)を含めて、後述のような「失敗事例」も多くあるようです。
今回は、M&Aにまつわる手順や手法などプラクティカルな部分は省いて、その根幹に関わる理念的な面に焦点を絞って、私自身の体験談を交えてお伝えしていきたいと思います。

出典元:「中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために〜」2022/3中小企業庁

私自身のM&A体験から・・

2002年にM&Aで私自身がオーナー経営者であった「家具・インテリア卸小売業」を売却したのは、私が53歳の時でした。
バブル経済が弾けて10年が経過し、金融庁が金融機関の不良債権処理のために「金融再生プログラム」を発表した頃です。翌年には「個人情報保護法」が制定される動きや、経済社会の変動期で、私は時代の変化に対して為すべき打開策を見出せず、社業の低迷と先行きの見通しが立たないことに苦しみ、体調も壊していました。
それまで「行け行けどんどん」で前ばかり向いて経営を続けてきたツケが回って来たようでした。社員数も4 0名を超えていて、設備投資による長期借入金も数億円程度あり、しのごの言っている余裕はない状況でした。

思い余って、弊社の監査役をお願いしていた顧問税理士に相談に行きました。
所員数約30名規模の税理士事務所でしたので、大阪府下ではトップランクの規模であったと記憶しています。前向きな対策を期待していた私の予想に反して、彼の口から出た言葉は、「M&Aの検討」との提案でした。当時、M&Aなどは大企業の世界のものだと考えていた私には、思いもよらない答えでした。
彼から中小企業を専門とする「M&A仲介企業」を紹介していただき、担当者の方と毎週のように「秘密裏」に打ち合わせを重ねて、M&Aの全体像とその可能性を知り得る機会に恵まれました。そこで私は、別のM&Aを目指すことにしました。

当時、私は大阪を代表する「都市型ホテル」にショップを出店していました。その店での最大のクライアントであった、社員数500名ほどの中堅企業のオーナー経営者を尊敬していて、「会社を売るなら、あの人に買ってもらおう!」と一人で心に決めました。
オーナー経営者にとって、「会社を売る」などという後ろ向きな話は、親しい友人にも誰にも相談することはできません。一歩間違えれば、信用不安にも繋がります。

 当時のM&Aが成功して、その後10数年間「雇われ経営者」として順調に勤務できたのは、大きく二つの理由からだと思います。
先ずは、売却金額に固執しなかったことです。それよりも、尊敬する経営者と一緒に事業が継続できる喜びの方が大きかったのです。
そして新たな企業グループの中で、社員と自分自身の成長も含めて「チャンス!」と前向きに捉えたこと。まだ若くて元気だったことが幸いしたのかも知れません。

しかしその2、3年後に、今度は逆に「M&A買い手側」として、グループ入りした繊維関係の企業の執行責任者を兼務せざるを得なくなります。元の経営者が「売り逃げ」のような状態で、前述のような「従業員や取引先への対応の失敗」から、社員数100名超のその企業は大混乱に陥っていました。
私は自身の本業の再生に加えて、今まで経験したことのない「製造業」で、しかも九州に立地する工場に毎月のように泊まり込み、立て直しに大変な苦労を重ねました。
しかし今では、誰にも経験できないような勉強をさせて戴けたと、心から感謝しています。
本業で全国を飛び回ったり、九州の地元の高校を回って新卒を採用したり、日本から技術移転していた中国の「研修生」を採用するために毎年工場長と一緒に「武漢」に面接に行ったりと、今では懐かしくも楽しい思い出しか残っていません。

それまで、私のM&Aは「特殊なケース」と考えていましたが、色んな実例を知る中で、私が譲渡時に感じた売却金額に固執しないこと・事業の成長チャンスと捉えたことは、意外と「あるべき本質」を押さえた事例であったことを確認できました。

中小企業の構造改革の必要性

最近テレビ番組やYouTubeなどで、日本の文化や技術を称賛する企画や内容に触れる機会が増えているように感じます。私も日本人の一員として、非常に嬉しい内容です。しかし優秀で真面目な日本人が不得意とする場面も目立ちます。日本人は「小さな改善」は得意ですが、パラダイムシフトというような「大改革」には向いていないのも事実なようです。しかも、スピードが要求される時代に、対応が遅すぎること。
「失われた30年」とはバブル経済破綻後、根幹に関わるような「大改革」を成し得なかったのが原因だと思われます。
日本人のほとんど誰もが「日本は世界第三位の工業国」と認識していますが、そのGDPを一人当たりに換算すると、その世界ランクは低く30位前後になっています。

出典元:FINANCIAL FIELD編集部:https://financial-field.com/living/entry-164600 参照

しかも、世界に先駆けて「少子高齢化」が進み、人口減少と高齢化の問題は、世界に類を見ないレベルになっています。
出典元:国土交通省・国土計画局「国土の長期展望」中間とりまとめ(H.23.2.21 国土審議会政策部会長期展望委員会)


出典元:内閣府ホームページ 平成30年版高齢社会白書(全体版)からの抜粋

日本における産業の中で、「失われた30年」を見据えて、大企業レベルでの「産業の再設計や構造改革」は、金融・鉄鋼・石油・電機など、ほぼその産業再編は終了したようです。
因みに、メガバンクの代表である「三菱UFJ銀行」が一体いくつの銀行が合併したのか、言える人は少ないと思います。
しかし問題は、全産業の「99.7%」(中小企業基本法上)を占める中小企業です。
しかもその中小企業が雇用する人数は、全体の70%近い割合にもなるという現実があります。

出典元:独立行政法人 中小企業基盤整備機構ホームページ https://www.smrj.go.jp/recruit/environment.html

中小企業が「DX」(デジタルトランスフォーメーション)※1に取り組むにも、
「VUCA」※2と言われる時代の急激な変化に対応するにも、また少なくなった人口への対策として海外への輸出を展開するにも、ある程度の「規模の拡大」を必要とします。
「大きいことがいいこと」ではありませんが、「小さ過ぎると実現不可能」なことが多く生まれています。そういった意味でも、中小企業のM&Aは時代の要請に沿った必要な施策であるとも言えるのです。
※1  DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いて業務の改善や新規ビジネスモデルの創出など、企業風土の変革を実現させること。
※2  VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた言葉です。これら四つの要因により、現在の社会経済環境が極めて予測困難な状況に直面しているという時代認識を表します。


出典元:中小企業白書2018年

大企業に比べて、中小企業の生産性の低さが、日本の一人当たりの生産性を押し下げている原因のひとつです。下記のデータにあるように、M&A実施企業には生産性向上や業績アップなどのメリットが生まれる可能性が高まります。

出典元:「中小企業の経営資源集約化に関する検討会取りまとめ」2021/4/18 中小企業庁

あるべきM&Aとは

中小企業のM&Aとは、「贈与と売買の混在する交換」に近い概念とも言われています。所有者と密接な関係にある「もの」を人類学の領域では「譲渡不可能な財」と呼ぶそうです。
企業売却に対する負のイメージに加えて、オーナー経営者は長期に渡って経営してきた会社やその従業員と強い心理的関係を形成していることが企業売却を困難にしているようです。所有者と「もの」との関係の強さが、オーナー経営者から異口同音に「娘を嫁に出す心境」などと表現される由縁です。
しかしM&Aは、元のオーナー経営者だけでは成し得なかった「生き残り・生存戦略」を超えた「成長戦略」の可能性を見据えて、目先の売買金額の多寡にこだわらず、企業の将来像の実現に向かって進むべきだと確信します。そのためには、お互いの企業文化やトップ同士の経営哲学が「合うか否か」にあると思います。
そういった「あるべきM&A」が実現できた時、従業員や取引先を含むすべてのステークホルダーの満足が可能になるのではないか、と考えます。

公平な立場の専門家に相談するのが一番!

理想的なM&Aを目指すにも、経済社会である以上「仲介企業」による「利益相反」※3がまったく起こらないとは言えません。M&Aの買い手企業は、何社も買収を繰り返す「常得意先」であるケースもあるのです。仲介企業の担当者のレベルにより問題が生じる場合もあるでしょう。インターネットサイトの実際の事例を見ても、大手企業の「お買い物」のような出来事に遭遇した、との実話も掲載されています。

最近は、ウェブによる「マッチングサイト」のプラットフォームも存在します。
色んな情報探索に加えて、一番のお勧めは「公平な立場」の専門家をアドバイザーにすることだと思います。「中小企業診断士」は、そう言った意味でも、アドバイザーとして一番適切な相談相手だと思います。「買い手」は何件もの「お買い物」をしようとも、「売り手」は大切に手塩にかけて育てた「虎の子」を売却するのですから。

※3 「利益相反」とは、当事者間の行為が、一方の立場では利益になるものの、他の立場では不利益になること。

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