経営コラム

中小企業の経営改善・事業再生

経営改善・事業再生とは

昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響で、業種やエリア、企業規模を問わず多くの中小企業が経営に深刻なダメージを受けています。特に新型コロナウイルス感染症の感染拡大以前から、「財務状況が悪い」、「資金繰りがタイトであった」、「利益率が低い又は赤字であった」企業は、より深刻な状況であると思います。そのため、今後は新規融資を受けるのではなく、既存融資の集約やリスケジュールにより、毎月の返済額を圧縮し、資金繰りの改善が必要な企業が増えると予測しています。
この借入金の集約やリスケジュール時および社内での経営改善のために経営改善計画を作成することをお勧めするのですが、「経営改善」や「事業再生」という似たシーンで使われる言葉があります。明確な定義があるわけではないのですが、下記のイメージを持っていただけると良いかと思います。

それぞれを書面に落とし込んだものが「経営改善計画書」や「事業再生計画書」です。
経営改善計画書の作成は、「経営改善計画策定支援事業」という国の助成金を活用することができます(詳細についてはリンク先をご参照ください)。

■中小企業庁HP「経営改善計画策定支援事業(通称405事業)」)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/kaizen/405.html
■大阪府中小企業再生支援協議会HP
https://www.osaka.cci.or.jp/saisei/

経営改善と事業再生に共通することは、スピード感と適切な手順を踏むことです。次項では、経営改善のステップについて記載します。

経営改善のステップ

経営改善・事業再生は、収益性の改善、金融機関へのリスケジュールの申込、資金繰りの改善などを行うのですが、これには明確な手順があります。経営を改善するには、固定費の削減、利益率の改善、売上高の増加の3つが必要であり、この順番を守ることが重要です。
固定費が高く、収益性が低い赤字体質の状態で売上高の増加を急ぐと赤字幅が拡大し、資金繰りも更に悪化するケースは少なくありません。まずは、固定費(役員報酬、家賃など定期契約、広告宣伝費、交通費、交際費、雑費など)や利益率(=粗利益率。仕入や外注費など)の見直しや改善を行い、ぜい肉をそぎ落とし、筋肉質となった状態で売上高の増加を目指します。
借入金の返済は固定費ではないのですが、毎月の支出を見直す必要がある場合には、金融機関に対して、元金返済猶予などのリスケジュールを依頼します。必ずしも「経営改善・事業再生=リスケジュール」ではないのです。
返済を猶予しても先延ばしをしているだけですので、いずれ返さなければなりません。しかし、経営改善は、固定費削減のように直ぐに効果が出るものもあれば、利益率改善や売上高増加など取り組んでから結果が出るまでに相当期間を要するものもあります。固定費削減は一時的な改善であり、中長期的には利益率改善や売上高増加が不可欠です。
そのため、経営改善・事業再生を進めるためには、定期的なモニタリングと見直し、軌道修正が必要です。計画通りに進んでいない原因や資金繰りの変化、取引状況などをリアルタイムで確認することで、経営改善・事業再生を進めていきます。

具体的な経営改善例

(1)製缶板金加工業の事例

年商規模を大きく超える過大な設備投資や無計画な事業承継などにより、経営が不安定となり、資金繰りが非常に厳しい状況でした。金融機関への返済は遅れることなく行っていましたが、ご相談を受けた時には「今月末の支払いが厳しい」という状況でしたので、当日中にメインバンクの担当者へ相談し、早急なリスケジュールにも応じていただけました。その後、経営改善計画を代表者と何度も打ち合わせを行い、約3カ月かけて経営改善計画書を作成し、バンクミーティング(※)により、計画説明とリスケジュールの期間延長を依頼しました。
計画策定後、代表者が中心となって徹底した固定費の削減、生産性向上や受注価格の見直しによる利益率の改善、そして自社HPでの販路開拓や既存取引先への営業によって売上高を増加させたことで、資金繰りは劇的に改善され、十分に利益計上できるようになりました。事業承継も問題なく進み、金融機関への返済も間もなく開始できる状況まで経営改善が進んでいます。
まだまだ経営改善の道中ですが、経営改善のステップを忠実に実行した経営改善の例だと言えます。
※バンクミーティングとは、特にリスケジュール中などの企業と取引のある金融機関が経営改善・事業再生の方向性や金融支援内容の共有や意見交換を行う場のことです。

(2)食品卸売業の事例

当該企業は市場規模が年々縮小している分野に対応されている食品卸売業であり、それに伴って業績は長期的に低迷していたため、借入金の返済を新たな借入金で返済していました。売上高が減少する中で、借入金が増加していたため、年商対比での借入金が非常に過大となっており、金融機関からの追加融資を受けることが出来なくなっていました。年商1億円超ですが、預金残高は数十万円であり、資金繰りが非常に切迫していました。この事例も当月から金融機関に対してリスケジュールの交渉を行い、経営改善計画書を作成しました。
売上高が減少している中で仕入高は変わっておらず、年々在庫は拡大し、外部倉庫で保管しているため、冷凍保管料が増え、利益率や資金繰りを圧迫していたことから、真っ先に在庫の圧縮を行いました。冷凍保管であれば賞味期限や品質に影響がない商材であったため、仕入を抑制し、既存の在庫を販売することを約半年続けると大幅に在庫を削減でき、冷凍保管料も減少し、少額ですが利益計上できるようになりました。
この事例も経営改善のステップに従って経営改善を実行している例です。いまだ、利益率の改善や売上高の増加は十分に行えていない状況ですが、約半年かけて預金残高も月商1か月分程度を確保できており、資金繰りは大幅に改善しています。

専門家へは早めに相談を

まずは自分でやってみてダメなら専門家へ相談することも悪くはないのですが、後からご相談をいただいたときには手遅れとなることも少なくありません。「あと数か月早く相談を受けていれば、もっといい選択肢があったのに」というケースは多くありますので、少しでも迷われたときなどは専門家へ相談されることをお勧めします。

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