今日からできる補助金申請
はじめに
※本コラムは2025年10月4日時点の情報に基づいて執筆されています。
商工中金のデータによりますと設備投資実施先を母数とした、補助金利用企業割合は2021年度では31.7%、2022年度では44.3%となっており、年々補助金を活用した設備投資の傾向は高まっています。
特に2021年3月に第1回公募が開始された「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」ではポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業などが思い切った事業再構築を行うことを支援する国の補助金で企業の規模拡大や付加価値向上を図り、生産性向上や賃上げにつなげていくことを目的とし、建物費や機械装置・システム構築費等が補助対象となる経費となっておりました。

出典:商工中金 中小企業の設備投資における補助金の活用について(2022年7月)
どんな補助金があるのか
現在公募中または公募の見通しがある補助金についてご紹介いたします。
・小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が作成した経営計画に基づき、販路開拓や生産性向上の取り組みにかかる費用の一部を支援する補助金です。具体的には、チラシ作成、ウェブサイト構築、店舗改装、展示会出展など、多岐にわたる経費が対象となります。申請には、商工会または商工会議所の確認・支援が必須となり、専門的なアドバイスを受けることが推奨されています。
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
日本の中小企業や小規模事業者が生産性向上や持続的な賃上げに向けた、革新的な新製品・新サービスの開発や海外需要開拓に 必要な設備投資等を支援する制度です。
本制度の目的は、中小企業等が、今後の事業環境変化(物価高や賃上げ・最低賃金引き上げ等)に対応するために、革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓のための設備や投資等に必要な経費の一部を補助することにより、中小企業者等の生産性向上を促進し、経済活性化を実現することとしています。
(※ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第21次公募要領より一部引用)
補助金の対象となるプロジェクトは、製造業に限らず、幅広い業種での活用が可能です。具体的には、生産ラインの自動化を図るための機器や、製品の品質向上を目的とした設備、ソフトウェアの購入や、技術ライセンスの取得費用、新製品や新サービスの試作にかかる費用、外部専門家や企業に業務を委託する際の費用も対象となります。
・新事業進出補助金
新しい分野へ進出したり、新たな製品・サービスを開発したりする際に、その費用の一部を補助する制度です。目的は「既存の事業」と異なる高付加価値な新市場への進出を行う際、設備投資などを通じてチャレンジを後押しし、生産性向上・賃上げにつなげることを目的としています。具体的には、新規事業に必要な工場の建設や事務所の改修・増築費用などの建物費、新しい製品の製造に必要な機械の導入費用や、新事業の運用に必要なシステム開発、ソフトウェアの購入費用、新製品や新サービスの広告、ホームページ制作、展示会への出展費用などが対象となります。
・IT導入補助金
業務効率化や生産性向上、DX推進を目的としたITツールを導入する際に、その費用の一部を補助する制度で、目的は働き方改革や賃上げ、インボイス制度への対応など、事業者の抱える課題解決を支援し、生産性向上に寄与できるものとなります。具体的には、IT導入支援事業者が事務局に登録し、審査を通過した会計ソフト、受発注システム、ECサイト、セキュリティ対策ツールなどが対象となります。
・中小企業省力化投資補助金
人手不足に悩む中小企業が、生産性向上や業務効率化を図るためIoTやロボットなどのデジタル技術を活用した設備を導入し、生産性の向上や賃上げにつなげることを目的とした補助金です。この補助金には、「カタログ注文型」と「一般型」の2つのタイプがあります。具体的には生産ラインの自動化や効率化を図るための機械や設備、また設置するための工事費用、業務効率化を目的としたソフトウェアの購入やカスタマイズにかかる費用も対象となることがあります。
それぞれの補助金に関しては、最新の公募要領の確認が必要となります。以前は補助対象経費となっていたものが、今回からは補助対象外になっていたり、新たな要件が追加されたため、公募要件を満たしていなかったりしたケースも散見されます。

出典:生成AIによる作成
GビズIDプライムアカウントの取得
上記の補助金を申請する場合は「jGrants」からの申請となりますが、ログインするためには「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要となります。今すぐには補助金申請を考えていない方も、「GビズIDプライムアカウント」を取得することを勧めます。「GビズIDプライムアカウント」は補助金や助成金の申請以外にも社会保険手続き、雇用保険、営業許可の申請が可能となり、手続きの効率化やコスト削減にもつながります。「GビズIDプライムアカウント」は法人、個人事業主を問わず申請可能で、マイナンバーカードがあればオンライン上でも申請できます。

https://gbiz-id.go.jp/top/ (GビズIDトップ画面)
申請時のポイントと加点項目
各補助金の公募要領に記載の目的に沿ったものであること、この補助金を活用する事によって、従業員の賃金アップ、省力化やコスト削減による生産性の向上、人材の育成、社会や地域への貢献や環境に対して配慮されたものであるかが、申請時のポイントとなります。
既に他社が実施している事業の模倣や、部分最適としかならない活動については審査の評価として、低くなる傾向があります。
また補助金審査時に加点評価される項目の例として、以下のものがあります。
- えるぼし認定
- くるみん認定
- 事業継続力強化計画の認定
- パートナーシップ構築宣言
- 健康経営優良法人認定
など
加点評価される項目については補助金によって異なりますので、公募要領を確認する必要があります。

左:女性活躍推進法に基づく認定マーク「えるぼし」
右:次世代認定マーク「くるみん」
外部支援者
補助金申請の支援を依頼する場合は、以下の点について留意が必要です。
- 支払金額(特に成功報酬を請求される場合)
- 支援期間(補助金入金まで支援があるのか)
- 支援内容
補助金の公募要領には外部支援者活用時の注意の記載がございますので、外部支援者を活用する場合は各補助金の公募要領を熟読の上、ご対応をお願いいたします。
※大阪中小企業診断士会では補助金申請についてのお問い合わせは受け付けておりません。補助金申請に関するご相談は他公的支援機関等をご検討ください。
補助金申請および採択後の注意点
①書類不備、誤記や数値間違い等の記載不備、提出書類と記載内容に矛盾がないこと、本当に実行可能な取り組みであるかを十分に確認してから申請してください。
②事務局による審査・採択後は交付決定通知を受けてから、補助対象となる経費の契約、発注、購入となります。交付決定前の支出は、いかなる理由があっても補助対象外となります。また応募申請時に計上した経費であっても、交付審査で補助対象外と判断され、補助金額が減額される可能性もあります。
③補助金の入金は補助事業完了後となりますので、補助事業に係る経費は前払いとなります。
④補助金の要件として、補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、一定の水準の賃上げや毎年、事業所内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準であること等の「賃上げ要件」「事業場内最賃水準要件」がある場合、いずれも達成できなかった場合、交付された補助金の返還を請求されることもあります。
【最後に】
補助金は、目標を達成するための資金を支援してくれる制度です。
新事業の立ち上げ、新しい設備の導入、人手不足解消のためのITツール導入など、本来なら自己資金だけでは難しかったことにも挑戦できます。
また、補助金の採択を受けるには、事業計画をしっかりと練り上げる必要があるため、事業の強みや課題を客観的に見つめ直し、事業をより良くしていくための貴重な機会となります。
補助金は単なる資金ではなく、企業の未来を拓くための投資にもなります。しかし虚偽の申請や目的外の利用といった不正行為は許されません。補助金の目的に沿って、正しく活用することが大前提となります。
まずはご自身の事業にどんな補助金が活用できるか調べてみてはいかがでしょうか。その一歩が、新しい未来への扉を開くかもしれません。

出典:生成AIによる作成
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(第21次公募)
小規模事業者持続化補助金 第18回公募 公募要領
新事業進出補助金 公募要領(第2回)
IT導入補助金2025 公募要領(通常枠)
中小企業省力化投資補助金 公募要領(第4回公募)
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