経営コラム

2040年に備える!医業・介護の中小企業が抑えるべきポイントについて

医業・介護業界に特化した経営コンサルタントとして、多くの医療機関・介護機関の経営改善、採用定着、生産性向上を支援を行っている矢野 誠と申します。私は医療業界に20年関わっており、親族に医師がいるため、医療業界に精通しています。

厚生労働省は、2040年を見据え、すべての人がより長く元気に活躍できる社会の実現を目指した政策「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめ」を推進しています。この政策において、中小企業が多い医業・介護業界(おおよそ20万施設存在)は、健康寿命の延伸と医療・福祉サービス改革という二つの重要な側面で、生産性向上が求められています。
本稿では、これらの改革プランと介護サービス事業における生産性向上ガイドラインのポイントを解説し、また、2040年を見据えた医業・介護の中小企業が抑えるべきポイントについてお話ししていきます。

出典:令和2 年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える

多様な就労・社会参加

高齢者がより長く元気に活躍できる社会の実現に不可欠です。具体的には以下の点が挙げられます。

  • 70歳までの就業機会の確保:様々な就業や社会参加の形態を含め、70歳までの就業機会を確保します。
  • 中途採用の拡大:個々の大企業における中途採用比率の情報公開や、「中途採用・経験者採用協議会」の知見を活用した企業への働きかけを強化します。ハローワークにおける求職者の状況に応じたマッチング支援の充実が期待されます。

健康寿命の延伸

健康寿命とは、国民一人ひとりが健康で自立した生活を送れる期間です。2040年までに、健康寿命を男女ともに3年以上延伸し、75歳以上にすることが目標です. この目標達成のため、以下の3分野を中心に取り組む必要があります。

  • 健康無関心層へのアプローチ強化:健康に関心の薄い層に対して、健康づくりを促すための新たな手法や工夫が求められます。例えば、糖尿病発症予防の取り組みで見られるように、行動変容を促す仕掛けを自治体と連携しながら構築し、予防・健康づくりを推進するのが好ましいです. 具体的には、健診・検診受診勧奨などが挙げられます。
  • 地域・保険者間の格差解消:地域や保険者によって健康状態や医療サービスに格差が見られる現状を改善する必要があります。地域包括ケアシステムを構築し、地域住民が主体的に健康づくりに取り組めるような環境整備が重要です。
  • 次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成、疾病予防・重症化予防、介護予防・フレイル対策、認知症予防:これら3つの分野において、より効果的な対策を推進する必要があります。

医療・福祉サービス改革

医療・福祉サービス改革では、少ない人手でも質の高いサービスを提供できるように、生産性の向上が求められています。具体的には、2040年時点で、単位時間当たりのサービス提供量を5%以上改善することが目標として設定されています。この目標達成のために、以下の4つのアプローチが重要となります。

  • ロボット・AI・ICT等の実用化推進、データヘルス改革:テクノロジーを活用し、業務効率化を図ることが重要です。介護分野においては、業務仕分け、元気高齢者の活躍、ロボット・センサー・ICTの活用などを推進する必要があります。
  • タスク・シフティングを担う人材の育成、シニア人材の活用推進:医師や看護師の業務を他の職種に移管(タスク・シフティング)し、それぞれの専門性を活かすことが求められます。また、介護助手などとしてシニア層を活かすことも有効です。
  • 組織マネジメント改革:意識改革や業務効率化を通じて、医療機関における労働時間短縮や福祉分野の生産性向上を目指します。
  • 経営の大規模化・協働化:医療法人や社会福祉法人の合併や事業の協働化を促進し、経営基盤を強化します。


出典:令和2 年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える

介護サービス事業における生産性向上ガイドライン

厚生労働省は「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を公開し、介護現場での生産性向上を支援しています。このガイドラインでは、介護サービスの質の向上を上位目標とし、以下の3つの視点から生産性向上に取り組むことを推奨しています。

  • 人材育成とチームケアの質の向上:OJTや研修などを通じて、職員のスキルアップを図り、チーム全体で質の高いケアを提供できる体制を構築します。
  • 情報共有の効率化:ICTツール(タブレット、チャットソフト等)を活用し、申し送り事項の共有や記録業務の効率化を図ります。
  • 業務改善:
    • 5S活動:整理・整頓・清掃・清潔・躾を徹底し、職場環境を改善します。
    • 業務の標準化:業務手順書を作成し、業務の質を平準化します。
    • 記録・報告様式の工夫:記録様式を見直し、記入時間や転記作業を削減します。
    • スケジュールの見直し:スケジュール管理を効率化し、訪問ルートを最適化します。
    • 休憩時間の確保:職員が確実に休憩を取れるように、業務計画や人員配置を見直します。


出典:介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版

医業・介護の中小企業が取り組むべきこと

医業・介護業界の中小企業は、上記の政策動向とガイドラインを踏まえ、以下の点に取り組むことが重要です。

  • 経営状況の見える化:事業ごとの貢献利益を把握し、経営状況を正確に把握します。
  • 課題の明確化:業務における問題点(ムリ・ムダ・ムラ)を洗い出し、改善すべき課題を明確にします。
  • 目標設定:厚生労働省が掲げる2040年の目標を見据え、各医療機関の現状に合わせた具体的な目標を設定します。
  • 計画策定と実行:課題解決に向けた具体的な計画を策定し、着実に実行します。
  • 職員の参画:職員の意見を取り入れ、全員で改善に取り組む体制を構築します。
  • 成功事例の共有:他の事業所の成功事例を参考に、自社に合った取り組みを導入します。
  • 情報収集:厚生労働省の政策やガイドラインに関する情報を収集し、常に最新の情報を把握します。

結論

2040年を見据えた社会保障・働き方改革は、医業・介護業界にとって避けて通れない道です。中小企業は、健康寿命の延伸と医療・福祉サービス改革という二つの側面から、生産性向上に取り組み、持続可能な経営を目指す必要があります。本稿で解説したポイントを参考に、各医療機関の状況に合わせた改革を進めてみてはいかがでしょうか。
業務改善や人材育成、ICT化、事業計画策定などの伴走支援は、中小企業診断士が最も得意とする領域の1つであり、伴走支援が可能な業界だと筆者は考えています。医療介護機関と中小企業診断士が手を組み、伴走支援しながら今後人口減少化に伴う事業構造の変化の波にうまく対応いただければと思います。

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