経営コラム

事業承継の正しい方法

1.はじめに

 

日本の会社の99%は中小企業でオーナー社長です。大多数の中小企業には事業承継が起こり、最も多いケースが親から子(息子・娘・娘婿)への社長交代です。

 

日本は百年以上続いている会社の数が世界一です。会社は継続させる意識がとても高く、老舗企業には独自の事業承継マニュアルが受け継がれています。

 

しかし、事業承継の正しい方法をあまり知られていません。なぜなら、経営者も後継者も学んでいないからです。多くの事業承継セミナーは税金や相続だけです。事業承継後の「経営」について、後継者が学ぶ内容は整理されておりません。

 

そこで、私は、私自身の後継者の経験と経営コンサルタントとしての知識を活用し、さらに、心理学や脳科学、組織論などをもとに、後継者が事業承継後の経営リスクを回避する事業「勝」継メソッドを確立しました。

 

事業承継には二つの側面があります。後継者の能力育成と会社の変革です。社長が交代する事業承継では、ベテラン社長から新米社長にバトンタッチします。ですから、事前に後継者の能力を高めることは必須です。

 

事業承継の失敗パターンの多くは準備不足です。

 

大変不幸な例ですが、現経営者が急死したために、後継者が急遽社長になった場合は、多くの場合、会社経営がうまくいきません。最悪の場合倒産することもあり、そうしたケースを私は見てきています。倒産はしなくても、社内がゴタゴタしたり、親子で揉めたりすることで、業績低下や人材流出などが起こり、後継者と会社が必要以上に苦労することもあります。

 

事業承継の準備さえしっかりして、後継者の経営力とリーダーシップを育成しておけば、社長交代によってのプラス効果で会社はより成長し、後継者も経営者らしくなれます。

 

事業承継を境に問題が起きる会社と成長する会社の差はとても大きいのです。

 

江戸時代の商家には「子不孝せず」という教えがあります。子供を不孝にしないように、後継者を育て、会社を引き渡す準備するのが親の務めと言う意味です。

 

私が常々申していることは「いつでも事業承継できる準備はしておくこと」こそが、現経営者の最後の責任であり、最大のリスクヘッジであるということです。

 

そして、受け継いだ後継者が会社を経営できるように、経営能力を育てることが最大の応援です。

 

私もかつて会社を引き継いだ時に、父親と経営方針で対立して、会社の状況を悪化させ、個人的にも父親と口をきかないような、そんな辛い時期がありました。

 

そんな経験を他の後継者の方にはしてほしくありません。

 

会社を経営しながら、後継者が幸せに生きるための方法を伝えるために、後継者育成コンサルタントをやっています。

 

 

2.事業承継の前提条件

 

ほとんどの中小企業において、事業を承継するには前提条件が3つあります。

 

1.経営者が60歳以上であること

2.引き継いだ会社が存続できること。

3.後継者が存在すること

 

3点です。

 

上記1については、経営者が60歳から、事業承継の準備を開始します。後継者の年齢にもよりますが、一般的に65歳から70歳の間に社長を交代し、会長になり、73歳前後で会社から身を引くことがベストです。

 

後継者は40歳程度で社長に就任し、45歳から全責任を負います。

 

上記2については会社が存続できることが、会社を「受け取る価値があるか」です。事業承継する会社は長年の生き残ってきた優秀な会社です。しかし、後継者にとって価値があるかは分かりません。経済的な価値だけでなく、組織風土などの価値も再確認します。

 

最後に上記3、後継者の存在が重要です。廃業する会社には、後継者不足で会社をたたむことが多いのです。

 

後継者の皆さんは「後継者の存在そのもの」が事業承継にとって前提条件であることを再認識してください。後継者がいなければ事業承継は起こりません。

 

事業承継の成否はその準備の時間と内容で決まります。標準で10年、短くても5年は必須です。後継者が、現経営者に比肩するほどの能力をつけるためには、継続的な育成が必須です。

 

その育成が必要な能力こそが「リーダーシップ力」と「マネジメント力」です。

 

 

3.後継者のリーダーシップ力

 

後継者は会社を引っ張る存在になるので、リーダーシップ力を伸ばす必要があります。そのための後継者の能力育成として、以下の3点が重要です。

 

1)「後継者メンタル」

2)「後継者の経営理念」

3)「コミュニケーション力」

 

1)「後継者メンタル」

 

事業承継の最重要事項が「後継者メンタル」です。この後継者メンタルとは、後継者が会社を引き継ぐことを自分で決断することです。そんなこと当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、

 

多くの後継者に

「あなたが会社を引き継ごうと決めたのは、いつですか」

と質問すると、

 

「なんとなく、子供のころから決まっていた」とか

「周囲の大人の意見に流されて」など漠然としています。

 

ですから、後継者が自分の人生設計として

 

「後継社長の人生」

「会社を辞めて、サラリーマンの人生」

「会社から独立して好きな仕事をする人生」

など、複数の選択肢を経済的、家族的、時間的、自己実現的など多方面から分析し、どの人生を自分で選ぶかの岐路であることを自覚していただきます。

 

後継者メンタルでは、後継者自身の決断を促すことで、事業承継のスタートラインに、ようやく立てるのです。

 

そして、決断とは、他の選択肢を捨てること、そして選択した目標を達成するために行動することです。

 

会社を経営していると、厳しいときが必ず来ます。その時に他の道に逃げず、「この道で成功する」という強い心を生み出すには、自分の人生を選択し、他の選択肢を捨てることが重要です。

 

【価値ある会社を乗っ取らせていただきます。】

 

後継者はこの決断によって会社の見方が180度変わります。これまでは、社長(親)から受け取るものだったのが、自分から会社を掴みにいきます。ちょっと大げさにいえば、乗っ取るつもりで仕事します。

 

親子ですので、敵対的ではなく「乗っ取らせていただきます」と友好的に行動します。

 

2)「後継者の経営理念」

 

友好的に乗っ取るなら、乗っ取った会社をどのように経営するかという「経営理念」を作ります。

 

既存の経営理念を加筆修正して、後継者が一生かけて実現でき、社会に存在する意義を明確にした経営理念を作り上げてください。

 

3)「コミュニケーション力」

 

最後がコミュニケーションです。コミュニケーションにおいては、「何を話すのか」「どのように話すのか」が重要です。

 

「何を」は経営理念や後継者が考え、今後の会社のマーケティングや組織など具体的に従業員へ話します。

 

「どのように」は後継者のコミュニケーション能力を高めることと、社内のコミュニケーションの仕組みを確立することです。

 

コミュニケーションの能力を高めるためには心理学にある「人のタイプ」の理解が必要です。また、コミュニケーションのしくみは日常の接し方や会議や個人面談など、さまざまな技法があります。

 

人材の価値観3タイプ、従業員の話し方3タイプなど私のセミナーでは詳細に使い方を教えています。これらを総合的に活用し、後継者のコミュニケーション力を高めます。

 

4.後継者のマネジメント力

 

後継者が経営者になる時に必要な会社を経営する能力が「後継者のマネジメント力」です。マネジメント力とは具体的には、

 

1)「マーケティングの強化」

2)「組織人事の再構築」

3)「財務体質の強化」

4)「株式取得」

 

この4つの計画策定と実行力です。このうち、2代目特有のポイントだけを記載します。

 

1)「マーケティングの強化」

 

後継者は「この会社をそのまま引き継いで大丈夫か」という将来への不安があります。後継者ならではのマーケティング強化では以下の2点を実施します。

 

1. 現事業の効率化

2. 将来の新製品(新事業)の創出

 

今のビジネスモデルが10年後には役に立たないことを前提に、会社の将来像と経営方針を後継者が決めます。

 

その前提として現状の詳細な分析が必要です。

 

現状の製品ごとの売上利益の分析、

顧客が何を望んでいるかをアンケートによる調査、

自社の強みを生み出している源泉、

 

などです。そこから、今後後継者が価値を提供する「顧客ターゲット」を詳細に設定します。顧客を絞り込むことで、顧客から選ばれる会社になります。これらをまとめ上げて、後継者が目指すマーケティングを完成させましょう。

 

2)「組織人事の再構築」

 

次にその計画を実現できるための組織の役割分担と、人財の育成について具体的に検討します。

 

どんな人財に入社してもらい、どんな人財に育てるのか、その後は管理職として、どんな能力が発揮され、部下をどのように育成させるのかなど、具体的な行動レベルの計画が必要です。

 

そして、人間には個性があり、価値観が違います。

 

これを3つのタイプに分けて分類管理する独自方法を事業『勝』継メソッドにはあります。

 

多くの後継者から「従業員にどう話せばいいか分かった」とか「ベテラン社員と分かり合えた」というお声を頂戴しています。詳しくは、お問い合わせください。

 

3)「財務体質の強化」

 

そして、後継者が苦手としている財務も十分に学びます。財務のポイントは

 

1.資金繰りができること

2.貸借対照表が分かること

3.投資の判断ができること、

 

3点です。これも1から3への順番です。

 

まずは毎日の現金とキャッシュの管理を後継者がすることで、資金の流れを学びます。会社の資金を絶やさないことが一番重要なことを知ります。

 

次に貸借対照表を理解します。会社の財産を示す貸借対照表が理解できないと、目の前の損益だけに意識が向き、資産を残すという会社の存在意義を見落とします。会社に現金や資産を残す方法を身につけます。

 

最後に、経営者になると最大の意思決定が投資です。これを財務的だけでなく、マーケティング的にも判断できるようにします。

 

4)「株式取得」

 

最後に株式を後継者が取得します。この株式を持たないと後継者は真の経営者になりません。しかも、現経営者から譲り受けるのではなく、

 

「乗っ取らせていただきます」

 

ならば、自社株式は自費で買います。このことが後継者の経営者意識を高めさせる一番の薬です。

 

株式取得手順については、まずはいまの株主を明確にして、分散しているようならば、後継者に集中させましょう。株を持たなければ、後継者は真の意味で経営者になりえません。

 

5.まとめ

 

事業承継は必ずやってきます。そのために2年から3年かけて準備します。そして、後継者を育成するために、リーダーシップ力とマネジメント力を高めます。その正しい方法と正しい順番を私は常に研修やセミナーコンサルティングで伝えています。

 

後継者の皆さんも、大変な状況かもしれませんが、会社の価値あるものを使えるかどうか選択できる立場にあるのです。

 

どうぞ、皆さんらしい決断をして、幸せな人生を実現してください。私はいつでも、応援する扉を開いています。

CONTACT US

お問い合わせ

お気軽にお問い合わせ・ご相談ください

お問い合わせに対してコンサルタントがヒアリングに伺います

Tel. 06-6809-5592

受付時間 平日 9:00〜17:00

お問い合わせ